意味[散文100のお題/4.実らない果実]

「実らない果実には、意味がないと思う?」
「さあ?」
「ちゃんと考えてよ。課題なんだから」
「何の課題だよ?」
「大学の、哲学講座」
「そんなの、自分で考えろよ!」
「人の意見も聞こうと思ったんじゃない」
「お前はどう思うんだよ?」
「私は……意味はあると思うわ」
「そうか?」
「ええ。実らなかったということに意味があるの」
「分かるような分からないような意見だな」
「じゃあ、あなたはどう考えるのよ」
「………俺は、意味なんてないと思うよ」
「どうして?」
「だって、実らなかったんだろ? 実らなきゃ、果実じゃないじゃん」



ありえない話[散文100のお題/8.硝子の境界線]

「ガラスがあるのにさ、ないと思ってぶつかったことってないか?」
「……網戸ならあるよ」
「恥ずかしいよな」
「まあね。でも……急にどうしたの?」
「いや、ちょっとバカなこと考えついたから」
「何?」
「もし、国と国との境界線がガラスで仕切られていたらってさ」
「いたら、どうなるの?」
「密入国者とかがぶつかって面白いのになって」
「…まあ、ありえない話よね」
「それを言っちゃあ…身も蓋もないじゃないか」



言葉[散文100のお題/18.私の欠片]

「ねえ、自分自身って、一体どこまでだと思う?」
「質問の意味が、よく判らないけど」
「つまり、つま先から頭のてっぺんまでが自分なのだと思う?」
「そうじゃないのか?」
「勿論、そうなんだけど、そうじゃなくて……」
「?」
「えーと、例えば、言葉は自分の一部だと思う?」
「ああ、そういうことね。言葉は…そうだな、自分の欠片だと思うよ」
「そう…」
「急にどうしたんだ? また講座の課題か?」
「ううん。思いついただけ」
「そっちは、どう思うんだ?」
「同じよ。言葉も私の欠片、私の一部」
「そうすると、言葉ってのは大切なものってことになるな」
「そうね。大切にしていけたら、いいけど」
「そうだな」



ミヤさん[散文100のお題/39.ダブルベッド]

「貴女の家、確かダブルベッドだったわよね?」
「そうだけど?」
「女性でも連れ込んでるの?」
「……お前、そういうこと言うなよな」
「え? ああ、ゴメン。そういうことじゃなくて」
「どういうことだ?」
「広いベッドに一人で寝るのって、寂しくない?」
「ないな」
「ないの?」
「ああ、一人じゃないからな。ミヤさんっていう、女性と寝てるんだよ」
「ミヤさん?」
「そ、美人だぜ。座っているだけで、凛としててさ」
「そうなんだ。今度紹介してよ」
「お前、会ったことあるぜ」
「え、いつ?」
「鍋パーティーの時に、俺が連れてきただろ」
「…………」
「思い出せない?」
「……………あ! あの白い猫のこと!?」
「そうそう、彼女がミヤさん」
「あー、確かに綺麗な猫だったわね」
「彼女がいるからな。別に寂しくはないさ」



Is that eternal?[散文100のお題/45.永遠の愛-eternal love-]

「永遠の愛って、存在すると思う?」
「愛の定義によると思うけど、存在するんじゃないか?」
「例えば?」
「例えば…俺のミヤさんに対する想いとか」
「貴方がミヤさんを可愛がっているのは知ってるけど、それが永遠の愛?」
「うーん。俺のミヤさんへの愛は、恋人に対する愛じゃないだろ」
「ええ」
「つまり、家族などに対する愛は永遠だと思うぞ」
「なるほど」
「お前は、どう考えるんだ」
「存在すると思うわ」
「それは恋人への想いか?」
「いいえ。種族への愛…と言えばいいかしら」
「どういうことだ?」
「つまり、私達は、人間は戦争ばかり繰り返す愚かな生き物だと知っているじゃない」
「ああ」
「でも、人間は滅びてしまえばいいとは思わないわね?」
「ああ」
「他の国でも戦争が起これば、可哀想だと思うし」
「……」
「それは、人間という種族を、私達が愛しているからだと思わない?」
「成る程ね。それだと、他の動植物へも、同じ思いを抱いていることにもなるな」
「そうね。ただし…永遠の愛と言い切れるかは、判らないけれど」
「未来には、そんな思いを抱かなくなるかもしれない、と?」
「ええ、残念ながら。それが永遠の愛であることを願うわね」
「ああ」








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