エルフ






エルフがいました。

あおいかみの、みどりのめの、エルフでした。

はだのしろい、みみのとがった、エルフでした。

エルフはひとりでくらしていました。

そのエルフのほかにエルフがいなかったので。

ひとりで、へやのなかでくらしていました。

こんくりーとでできたへやですが、かべのひとつが、がらすでできています。

エルフはそのへやからでることができません。

どあにはかぎがかかっていて、人間がくるときいがいはひらかないのです。

人間はたべものと、のみものとを、もってきます。

エルフはそれがすきではありませんが、ほかにたべるものがないので、しかたなくたべています。

人間はときどき、エルフをきずつけて、ちをとります。

からだもけんさします。

エルフがいやがっても、おさえつけてけんさします。

人間は、それがじぶんたちのするべきことだと、おもっているようです。

まいにち、がらすのむこうにたくさんの人間が、エルフをみにやってきます。

エルフはそれを、おもしろくなさそうにながめます。

がらすのむこうにみえるのは、はいいろの、おおきなしかくいはこばかりです。

エルフのみなれた、

(エルフのひとみのいろのように)みどりにもえるしょくぶつも、

(エルフのかみのいろのような)すきとおったあおいろのそらも、

そこではみえません。

エルフはわらいません。

かなしそうに、とおくをみているだけです。

エルフがなにをみているのか、だれもしりません。

エルフはきょうも、ひとりで、とおくをみつめています。



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