耳が痛いくらいの喧騒。
人いきれ。
見渡す限りの、人、人、人。広場を埋め尽くして、なお、いまだ増えゆく。
誰も彼も、皆一様に同じ表情を浮かべ。
緊張と興奮と。
恐怖と陶酔と。
見渡せども、見渡せども。
人。
人。
人。
喚声。
中でも、一際響く声がある。
“剣を取れ”
深く、深く、胸一杯に息を吸い込み。
“弓を持て”
吐き出して、ゆっくりと目を瞑る。
“盾を背負え”
暗闇。
訪れる静寂。
聞こえるのは、鼓動。血が身体を巡る音。
そして、声。
“いざ行かん”
掲げるのは何か?
―――――――――それは、誇り。
叫ぶのは何か?
―――――――――それは、自由。
“我らが道を遮るものなし”
喧騒が蘇る。
目を開き、辺りを見渡せば、人、人、人。広場を埋め尽くして、彼方を…遥か彼方を睨む。
誰も彼も、皆一様にそれを求め。
自由と尊厳と。
勝利と解放と。
“我らが歩を阻むものなし”
迸る熱気。
うねる物音。
弾ける喊声。
広場を埋め尽くす。
人。
人。
人。
湧き上がる衝動。
広がる行動。
あるいは剣を、あるいは弓を、あるいは槍を、あるいは拳を、碧空へ掲げ。
彼方を睨み。
声を揃え。
“いざ行かん”
「―――誇りを! 自由を! 解放を!」
“いざ行かん!”
「―――我らに勝利を!!」
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[090120/一部変更]
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