島に降る雨




 この島に来て、太陽雨を何度も見た。


 以前に訪れた時は、台風の影響か晴れたり雨になったりを繰り返していた。
 面白いのは、日差しが強いことだ。目が痛いくらいに輝く太陽を見たと思ったら、突然雲が出てきて曇りになる。僕の住んでいる所でもスコールのように雨が降るから慣れたつもりでいたけれど、あくまでもつもりだったみたいだ。


 太陽雨も、鮮明な景色に被さるように降る。


 まだ夏の最中のような日差しを縁側に腰掛けて見ていると、細かな雨が降っていることに気づくことがある。手をかざしてみなければ確信が持てないくらい細かな雨。小さな雨粒は地面すら濡らさずに、音もなく落ちて来る。手の平に感じる一瞬の冷たさだけが、彼等の存在を伝える。
 荒々しい太陽雨もある。それこそスコールのように激しい雨なのに、日差しはやっぱり強烈だ。雨雲は一体どこにあるのだろうかと不思議に思ってしまう。まるで空気中から、雨粒が溢れ落ちているみたいだ。もしかすると空は雨なんて降らせる気はまったくなくて、空のネックレスの糸が切れてしまって勝手に大粒の真珠が散らばったのかもしれない。
 狐の嫁入りなんて言い方があるけれど、太陽雨というのがこの島の雨に合っている気がする。


 きっと島の地形や位置の問題じゃない。この島にこんな雨を降らせるのは、この島の風や空気や山や田んぼや屋敷に染み付いた人々の鋭い悲しみと、それを越える日々の営みなのだと思う。




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[090117/一部変更]







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