夜来香








夜、庭の片隅にも星は開く。
微かな夜気に溶ける甘ゐ香り。

星は呼ぶ。



“私を見てくださゐ”



その言葉に誘われるやうに僕は庭へと出たのですが、
星達はその名のたうり、静かに月の下で輝ゐておりました。


あまりに爽やかな夜なので、

僕はまるで生き物のやうに息を吸ってまた吐ゐてを繰り返してゐたのです。




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