雪と猫
ある日、こたつに入っていた家猫のアリンが、僕の鼻先に来てしゃべった。
「雪が降るよ」
猫がしゃべるなんてびっくりしたけど、このご時世だ、まあ、そんなこともあるだろうと思って、「そうかい」と返した。
するとアリンは小首をかしげて、「雪は嫌いかな?」と聞いた。
僕はみかんに手を伸ばしながら、「そんなことないよ」と答えた。
「明日、雪が降るよ」
「うん。」
みかんを1房、アリンの鼻先で示してみたけれど、彼女はみかんを食べる気はないようだった。
そこで僕がその1房を口に放り込んだところで、アリンはもう一度、「雪が降るよ」と言った。
「うん、初雪だね」
僕がそう言うと、彼女は満足そうに尻尾を少し動かした。それから僕の鼻の頭をざらざらする舌でぺろりとなめて、再びこたつに潜り込んだ。
翌日、アリンの言う通り雪が降った。
僕がちらりとアリンを見ると、彼女は誇らしげに尻尾を動かして、「ニャー」と一声鳴いた。
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